研究開発方針
多様化するニーズに応じ、イメージをカタチにする研究開発室
研究開発室では「keep trying」をテーマに一人ひとりが研究員としての自覚と使命感を持って、
安全かつ安心してご使用頂けるお客様のニーズにこたえた製品作りを心がけ、
研究開発に日々取り組んでいます。
- 本社 研究開発室
- 西宮工場 研究開発センター
研究開発への取組み
鈴木油脂工業は、工業用手洗いのパイオニア「アロエローヤル」、マイクロカプセルの「ゴッドボール」、粘性の高いカビ取り剤「かびとりいっぱつ」のような独自性のある製品を市場に提供し続けてまいりました。その過程で得られた経験や技術や諦めない力が当社の財産でもあり、お客様の付加価値に繋がっていると考えています。
創造的な研究開発で「私たちから新しい未来を作ると」いう信念のもと、今後とも研究開発力の強化に努めていきます。
知的財産の考え方
知的財産の管理
研究・開発の成果である技術について取得した特許権等(国内・国外含)の知的財産権は重要な経営資源です。
経済活動のグローバル化に伴い、中小企業における知的財産の保護こそ大事であると考えています。
鈴木油脂では開発技術向上に弛みない企業努力により公的・法人機関の奨励を受けています。
昭和61年6月 | 技術改善等補助金/大阪通商産業局 |
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昭和61年7月 | 大阪府先端技術産業育成資金融資/大阪府 |
平成2年7月 | 大阪府フロンティア育成資金融資/大阪府 |
平成4年3月 | 債務保証承認/(財)研究開発型企業育成センター |
平成4年3月 | 債務保証承認/(財)三和ベンチャー育成資金 |
平成4年9月 | 大阪府技術向上奨励助成金/大阪府 |
平成4年10月 | (財)たくぎんフロンティア基金研究開発助成金/(財)たくぎんフロンティア基金 |
平成7年1月 | アイデア技術開発助成金/(財)新技術開発財団 |
平成7年6月 | 平成7年度技術改善費等補助金/近畿通商産業局 |
平成7年11月 | 海外研究等助成金/(財)中小企業ベンチャー振興会 |
平成8年 | 中小企業創造基盤技術研究事業/中小企業事業団 |
平成9年3月 | 独創的高機能材料創製技術資金/(財)化学技術戦略推進機構 |
平成14年 | 大阪府産学官共同研究振興補助金/大阪府 |
製品開発事例Ⅰ
手洗い洗剤開発秘話 担当:仲村
一般の方にはほとんど目に触れない不思議な洗剤が、当社のメイン商品です。
私が初めてこの洗剤に触れたのは50年近く前、当時中学を卒業した私は、ポンプを製造する会社でアルバイトをしました。鋳型で作ったポンプのフレームを、削ったり穴を開けたりするのが仕事でした。切削油を使っての作業ですので、いつも手は油だらけでした。昼休みには手を洗って食事をするのですが、しっとりとした黄色い粉がトレーに盛られて、手洗い場に置いてありました。これを手に取り、良くこすり合わせてから水で流すと、見事に油だらけの手がきれいになりました。世の中にはこんなすばらしい洗剤が有るんだなと、つくづく感心しておりました。
それから10年後、何のご縁か私はこの洗剤を製造する会社に就職することになりました。
開発に至った経緯
皆さんも極希にでしょうが、手に付いた油を石鹸で洗われることがあると思います。なかなか落ちません。何度と無く石鹸を塗りつけて洗い流し、塗りつけて洗い流し、やっと落ちたという経験をされていると思います。恐らくこの洗剤が無い頃の工場では、こんな光景が見られたことと思います。あえて私がこの手を洗う物を洗剤と書いていますのは、普通の石鹸とルーツが異なるからです。この洗剤のルーツは実は手を洗う物ではなく、機械やパーツを洗う洗剤です。油で汚れた機械を洗う洗剤ですから当然油汚れは良く落ちます。機械を洗って最後に自分の手を洗う。当然の流れであったかと思います。
工業用クリーム洗剤の開発
しかし、機械を洗う洗剤で手を洗うのですから、当然手は荒れ放題、黒いシミが入ったひび割れが、働く男の勲章みたいな物でした。私が初めに出会った黄色い粉、これは当時いっぱいあったオガ屑に洗剤を染み込ませた物でした。やがて、より硬く洗剤をいっぱい染み込ませることが出来る石の粉(パーライト)に代わり、この手洗い洗剤は一世を風靡しました。私の入社当時は、この洗剤が主流でしたが、当社には「エルグ」という画期的な商品が有りました。油と水を乳化した、本当の意味でのクリーム洗剤です。当時のアメリカの手洗い洗剤を、日本の市場に合わせて改良したと聞いています。
日本初の工業用クリーム洗剤「エルグ」の製造販売
今やクリーム型洗剤は市場にいっぱい出回っていますが、恐らくこれが日本で最初の業務用クリーム洗剤だと思います。原理は手に付いた油を、洗剤の中に入った油が溶かし出して落とすという物でした。その後はどちらかというとパーライト洗剤に近い、物理的に汚れを落とすスクラブ材入り洗剤が主流となっています。弊社、塗料用手洗い洗剤のように溶解力と研磨材を併用した洗剤もあります。
手洗い洗剤の今後
現在業務用手洗い洗剤は、ほとんどの商品が手を洗うことを主として開発された化粧品となり、手肌に優しい処方になっています。使用される方のニーズもあったでしょうが、汚れそのものも昔とは変わってきていることは間違いありません。 この流れはますます進んでくると、将来的には業務用手洗い洗剤そのものも、無くなってしまうのでしょうか? 昔の手洗いは、手に付いた汚れを落とすのが主な目的でした。今の手洗いは、手に付いた細菌やウィルスを落とすのが主な目的となってきています。昔のように食事の前に手に付いた油を落とすのではなく、細菌やウィルスが口から体内に入るのを防ぐために手を洗います。会社として、工場や現場で働く人の美観を維持するために置かれていた手洗い洗剤が、工場だけでなく、事務所や倉庫など、あらゆる社員の健康や職場環境の維持のために必要とされる時代が、既にそこまで来ています。ちなみに、この殺菌効果を持つ手洗いとして、当社にはローヤルエースやオフィスソープがあります。
製品開発事例Ⅱ
マイクロカプセル「ゴッドボール」開発秘話 担当:上田
無機質中空多孔質微粒子「ゴッドボール」は、当社が独立行政法人・産業技術総合研究所関西センターで開発された「界面反応法」を基礎として弊社の長年培ってきた乳化・可溶化技術により製造方法を確立し、真球度の高い粒径約1~100μm多孔質シリカ粒子や「膜乳化技術」を利用して作製したシャープな粒度分布を持った粒子が製造可能です。 また、「ゴッドボール」は耐熱性、耐薬品性に優れ、粒子径・比表面積などの調整が可能なため、各種用途やニーズに合わせて柔軟な対応が可能です。多孔質シリカ粒子の特長である、粒子内部に固体、顔料、香料、薬品などを担持させる機能を持っており、徐放効果や吸着効果を様々な産業に応用頂いております。
マイクロカプセル誕生の経緯
無機質マイクロカプセルは当時の通産省工業技術院大阪工業試験所の中原佳子先生が開発されました。その中原先生の研究室に弊社の研究員が学生時代に研修に行っていたのが始まりです。
昭和50年代始めにはポリマー(有機物)を壁材としてマイクロカプセルは存在していましたが、無機質を壁材としたマイクロカプセルはそれとは異なる農薬や抗菌剤の徐放機能を有する注目の新規材料でした。
当時の社長鈴木桂祐(現相談役)が弊社の主力の洗浄剤に代わる次の新規事業を模索していたところ、行き着いたのがその無機質マイクロカプセルでした。その研究員と中原先生との繋がりも有り、これを工業化することを決断しました。
開発、製品化までの苦労
工業化に取り組むことを決定しましたが、それは困難の連続でした。実験室での少量の合成では使用できた材料も大量生産には不向きでそれに代わる材料の探索から始まり、延べ数100回の実験が繰り返され工業化に適した処方にたどり着きました。その後の大量生産用の各種の製造装置の選定および立ち上げは暗中模索が日々でしたが、昭和62年にその製造プラントに竣工にたどり着きました。ただ、その新規プラント建設は当時の売上規模からすると非常に大きな投資となりました。
現在でも当社を代表する製品、人気の秘訣
そのような労力と費用を投入して立ち上げたマイクロカプセル事業でしたが、当時のニーズに応えられるような性能を発揮できず、製造プラントも開店休業の状態が続きました。ただ、カプセルの開発当時からの交流のあったビジネスパートナー(化粧品用粉体処理メーカー)がその材料の将来性を感じ、化粧品業界に粘り強く紹介して頂いたおかげも有り、数年後徐々に販売数量が増え、現在では化粧品の感触改良剤として、国内外の大手化粧品メーカーを中心に納入しています。
その後、同様な素材は市場に投入されてきましたが、弊社の独自の製造方法からくる滑らかな感触が化粧品用途に適しておりかつ、そのビジネスパートナーがいち早く化粧品業界に紹介してくれたことが現在のマイクロカプセル事業の礎になっています。